研究課題/領域番号 |
05454357
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
平 明 鹿児島大学, 医学部, 教授 (30041289)
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研究分担者 |
古賀 正哲 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手
森山 由紀則 鹿児島大学, 医学部, 助手 (80221638)
西元寺 秀明 鹿児島大学, 医学部・附属病院, 助手 (40170485)
下川 新二 鹿児島大学, 医学部, 講師 (40170998)
田中 紘輝 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (00163519)
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キーワード | 腹腔内冷却低体温 / 胸腹部多臓器同所性移植 / 組織血流量 / ATP値 / 人口機能 / 過剰乳酸値 |
研究概要 |
腹腔を形成する腹膜の総面積は体表面積に相当する。しかも腹膜は(1)血流豊富で、低体温導入時の熱交換能は体表面冷却を大きく上廻る。(2)腹腔内へのice slush撒布による低体温導入は臓器を摘出する事なく行えるので、臓器への機械的損傷が妨げる。(3)冷却された血液は右心房、右室、肺の順路で進む冷却法で安全である。 本法の利点を考慮して胸・腹部の移植臓器を同時に得る為の方策として検討を従来重ねてきた。結果は経年的に報告して来たが(1)低温による各臓器への障害はない。(2)全身的な不利もない。(3)低体温下での摘出で各臓器に阻血時間がない。(4)臓器機能は移植時も保たれている。(5)低温における脳死体管理での薬物管理も確立し得た。と要約しうる。これを踏まえて今年度、肝・膵・小腸に関しては各臓器の組織血流量、過剰乳酸値、ATPを操作の途中と移植再灌流後に比較した。同法で循環の安全域と考えられた30-32℃近辺での保存では常温との間に有意差はなかった。一方、心臓は腹腔内冷却で32℃とし4時間後に4℃Stanford液による灌流を行って摘出、その後同液に3時間浸漬保存して同所性移植を行った。心拍出量、左室圧、LVdp/dt、心筋ATPを移植再灌流後、2時間後に評価したが、常温下の同様な管理で同所性移植をした群と比較し循環動態、心筋ATPに差はなかった。 腹腔内冷却の本法は循環の危機を迎えている状態では酸素需要が減少していて有利といえる。すなわち脳死の判定後に腹腔内低体温管理を導入し、酸素需要の低い状態において予期し得ない組織血流量低下の危機に安全に対処しうることが判明した。また、胸腔、腹腔を問わず本法で多臓器の冷却保存を安全に行い得るので今後は個々の臓器特性について更に個別に検討を加えて管理法をよりよく整備出来ると考える。
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