研究課題/領域番号 |
05454363
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
金澤 曉太郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (90111377)
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研究分担者 |
土屋 一成 自治医科大学, 医学部, 助手 (90217331)
岡田 真樹 自治医科大学, 医学部, 講師 (40254924)
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キーワード | 漿膜 / 乳斑 / OK-432 / 好中球 / 抗腫瘍効果 / 石綿 / 悪性中皮腫 / 腫瘍ウイルス |
研究概要 |
今年度は乳斑に作用するBiological Response Modifier (BRM)の差異が、同部位において誘導される好中球の殺腫瘍能に如何なる影響を及ぼすかを解明した。また、石綿による悪性中皮腫の発生とウイルスの関係についての研究を行った。 BRMの一つであるOK-432(不活性化溶連菌)はBAMC-1細胞に強い殺細胞作用を示す。これに対して同系の溶連菌の中で抗腫瘍効果のないことが証明されている菌株PC-C203UをOK-432と同量投与した場合には両者の間に著明な差異のあることが証明された。すなわちBAMC-1細胞を腹腔内に接種したBALB/Cマウスの腹腔内にこれらBRMを投与すると、投与後2時間から乳斑における好中球の新生が認められるようになり、同時に多量の好中球が腹腔内に遊走し、腫瘍細胞に接着しかつ殺細胞作用を示すが、その程度に著明な差があり、OK-432に比較しPC-C203Uでは乳斑における好中球誘導能、それら好中球の腫瘍細胞への接着能、さらには殺腫瘍細胞能が著明に低いことが光顕・電顕ならびにapoptosisを指標とした検索で証明された。 石綿がMoloney murine sarcoma virus (MSV)による悪性中皮腫の発生を促進することは先に報告したところであるが、石綿自体に弱い癌原性があってそれをMSVのhelper virusであるmurine leukemia virus (MLV)が促進する可能性がある点が指摘されている為に、この点を中心に研究を行った。石綿とMLVの接種では同量のMLVを持つMSVの場合と異なり、漿膜腔における腫瘍発生は全く認められなかった。この所見は石綿自体に癌原性があるとする現在の考えと異なり、石綿はある種の腫瘍ウイルスの増殖に好都合な条件を与えるものであって、直接に悪性中皮腫の発生には関係しないのではなかろうかという結論を導くものであった。
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