研究概要 |
われわれは末梢血全血よりメトシリン耐性黄色ブドウ球菌のDNAを直接採取し、MRSAの薬剤耐性を担う遺伝子であるmec A遺伝子を2組のプライマーとDNAポリメレースであるTthをもちいてPCRにて増幅したのち、電気泳動にてmec A遺伝子を検出する方法を開発し、その感度をMRSAの希釈系列を作り本法で検討したところ、1mlあたり数個のMRSAが存在していればMRSAを検出可能であった。実際、外科領域の重症感染患者30例について従来からの血液培養法と比較検討した結果、従来の血液培養法でMRSAが検出し得た20症例では本法によっていずれも検出可能であった。さらに、臨床上明らかに敗血症症状を呈しかつMRSAを局所に同定しえるにもかかわらず従来の血液培養法では検出し得なかった2症例でも我々のPCR法を用いた診断法ではMRSAを検出可能であった。MRSA敗血症と診断されるまでの期間を両者で比較すると、従来の培養法では菌の同定に平均4日、感受性の判定までには5日間要していたのが、本法を使用すると同じ症例で4時間で感受性まで判定可能であった。ただ、本法の問題点として、表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌とでは、その臨床症状には大きな違いがあり、黄色ブドウ球菌の方がはるかに重篤であるのに両者を鑑別し得ないことである。両者を鑑別するために、臨床分離株についてはTSST-1遺伝子を同時に検出する試みを行い、良好な結果が得られた。来年度は実際の臨床例について行う予定であるさらに、これら重症感染患者の末梢血よりtotalRNAを抽出後にRT-PCRで各種サイトカインmRNAの発現を検討してみると、重症感染症患者ではIL-6のみでなくIL-1,TNFmRNAも活性化されていた。
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