研究概要 |
1。末梢血より直接DNAを抽出し、MRSAの薬剤耐性を担う遺伝子であるmecA遺伝子を2組のプライマーとDNAポリメレースであるTthを用いてPCRを行うわれわれが開発した方法により、4時間以内にMRSA敗血症を診断することが可能になった。また、TSST遺伝子を同時に同様の方法により検出することによりMRSAとMRSEとの鑑別も可能であった。本法の感度をMRSAの希釈系列で検討したところ、1m1中に数個存在すれば検出可能であった。また、従来の血液培養法でMRSAが検出されないような症例でも、本法によりMRSA敗血症が診断可能であった。 2。ヒト末梢血より細胞分画を分離する事なくRNAを抽出し、IL-1,IL-2,TNF,IL-2RのサイトカインmRNA発現をPCR法にて検討した結果、正常健人ではいずれのサイトカインmRNAの発現も認められなかったが、重症感染症患者ではIL-1とTNFのmRNAが発現していた。なお、腎移植患者ではIL-1、TNFに加えてIL-2RのmRNAも発現しており,IL-2RmRNAを測定することにより免疫学的モニタリングが行える可能性もあることが判明した。 3。敗血症発症・重症化の際に腎機能障害が発生することが多い。そこで、内因性エンドテリンがその機序として重要な役割を果たしていることを、ラットのエンドトキシンモデルで腎機能マーカーや血管作動性物質の変動を測定し、抗エンドテリン抗体を投与することにより証明した。さらに、内因性エンドテリンを制御することにより腎機能を改善をすることを目的として、エンドテリン変換酵素をラットのモデルに投与したところ、血中big endothelinの上昇と血中エンドテリンの低下が認められた。
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