癌転移抑制遺伝子 nm23/NDP キナーゼに関する基礎ならびに臨床的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454367
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 平山 廉三 東京医科歯科大学, 医学部・第二外科, 助教授 (10014317)
• 研究分担者: 三島 好雄 東京医科歯科大学, 医学部・第二外科, 教授 (00010158) ; 吉永 圭吾 東京医科歯科大学, 医学部・第二外科, 助手 (80240745) ; 仁瓶 善郎 東京医科歯科大学, 医学部・第二外科, 講師 (00189341)
• キーワード: ガン転移 / 転移抑制遺伝子 / nm23 / NDPキナーゼ

研究概要

平成6年度における研究計画に掲げた如く、抗NDPキナーゼ/Nm23単クローン抗体(特に、α及びβイソフォームを区別できる抗体)を得てその力価の検討をすすめ、また、液体窒素で凍結、超低温槽にて保存中の臨床「手術」サンプル、および実験動物において、ノザーンレベル、さらに in situ hybridisation によった検索をすすめた。また、臨床症例において、転移予見のインジケーターとしての臨床的価値を検討するため、手術ののち長期間にわたり追跡調査された胃癌、大腸癌、乳癌症例について、上記抗体によって詳細な免疫染色を施し、癌組織内のNDPキナーゼ発現のレベルと長期予後の関係を調査して、転移予知の predictive marker としての価値を検索した。
その結果、乳癌について有意の逆相関を認めた。その後の検索から、ヒト乳癌でNDPキナーゼ/Nm23は転移抑制因子として発現し、その量と癌転移能とが反比例する事実を明らかにした。その後、胃癌についてほぼ近似の結果を得た。しかし、大腸癌についての検索から、NDPキナーゼ=転移抑制因子といった公式が必ずしも全腫瘍に当てはまるものではなく、NDPキナーゼは転移能を、促進的にも抑制的にも調節することが明らかになった。
これまで、ハウスキーピング酵素としての役割が強調されてきたNDPキナーゼについて、NTPプールの形成、情報伝達、形態形成、増殖と分化などに関わる多様な役割が最近明らかにされた、これらのうち、シグナル伝達系におけるNDPキナーゼの役割こそ、癌転移機序に特に重要と考えられ、抗NDPキナーゼ/Nm23単クローン抗体(特に、α及びβイソフォームを区別できる抗体)を得て、転移能に関わるシグナル伝達系でのNDPキナーゼの調節機序を解明しつつあり、治療のみならず、治療面におけるNDPキナーゼ利用の可能性を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Takemura K.,Hirayama R,et al.: "Expression of Vimentin in gastric cancer : a possible indicator for prognosis." Pathobiology. 62. 149-154 (1994)
• [文献書誌] Takemura K.,Hirayama R,et al.: "Expression of nucleoside diphosphate kinase associated with favorable prognosis in breast cancer" East West Exchange in Surgery (ed.Idetsuki Y). II(印刷中). (1995)
• [文献書誌] Shoji Y.,Hirayama R.,et al: "Experiences with the Iinear cutter technique for performing Roux-en-Y anastomosis following total gastrectomy" Surgery Today. 25(印刷中). (1995)
• [文献書誌] 平山廉三,他: "老人の癌の特徴" 基礎老化研究. 18. 78-83 (1994)
• [文献書誌] 竹村和郎,平山廉三,他: "胃癌におけるHLA-DR抗原の発現と腫瘍内浸潤T細胞に関する免疫組織化学的検討" Bipotherapy. 8. 706-708 (1994)
• [文献書誌] 平山廉三: "臨床例におけるカドヘリン発現と転移の相関 C乳癌" 日本臨床. 53(印刷中). (1995)
• [文献書誌] 平山廉三: "胃癌手術ノート" へるす出版(印刷中), (1995)
• [文献書誌] 平山廉三: "必要な胃の構造 胃の外科(武藤輝一、岡島邦雄、青木照明、北島政樹、杉山貢 編)" 医学書院(印刷中), (1995)