研究概要 |
肝・膵同時切除により発生する新たな病態の解析を行うため、生後7週の雄性SD系ラットを用い、肝膵同時切除モデルを作成した。肝切除はHigging and Andersonに準じ70%肝切除を行い、膵切除はSplenic lobe(50%)の60%,gastric lobe (20%)の50%,duodenal lobe(20%)の50%の切除を行い膵全体では50%切除を行った。膵切除の際にはmicrosurgery techniqueを用い、各lobeの膵管を確実に結紮すること、duodenumとspleenの血管のarcadeを残すことにより1週間以内の死亡率は0となった。この100%生存モデルでの肝・膵同時切除後のcatabolismおよび肝エネルギー代謝の状態をみるため、以下のごとく検討した。Sham operation群(S群)、70%肝切除群(H群),50%膵切除群(P群),70%肝切除+50%膵切除群(HP群)の4群に分け、各群の術前及び術後1・3・6・12・24時間の血糖、インスリン(I)、グルカゴン(G)、カテコラミン(CA)3分画、動脈血中ケトン体比(AKBR)を測定した。血糖値は各群とも、全経過中130mg/dl以上に保たれていた。G/I比及びCA(特にNorepinephrine)は、HP群のみにおいて術後24時間以上高値(術前の3.6倍)を持続した。AKBRはHP群のみ術後6時間から12時間にかけて有意な低下(6時間;0.32)を認めた。今回の生存モデルでもHP群では、AKBRの低下する時期が存在し、G/I比、CAの変動からみて術後のCatabolic phaseが遷延することが示された。臨床例では、当モデルにおけるAKBRの低下に相当する時期に、出血や感染等過度な肝臓へのエネルギー需要負荷が発生すると肝不全に陥ることが示唆され、今後の課題と考えられた。
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