研究課題
われわれは本学高次機能制御研究センター免疫機能分野谷口教授との共同研究で腫瘍特異性の高い抗肺癌ヒト型モノクローナル抗体(4G12)を作製した。この抗体は肺癌、特に肺扁平上皮癌と高率に反応する。従ってこの抗体の認識する抗原は肺扁平上皮癌を中心とした肺癌に高率に表現されていると考えられる。抗イディオタイプ抗体は抗体の抗原結合部に対する抗体であり、抗イディオタイプ抗体のイディオトープは抗原と同様の構造を示すと考えられている。われわれは4G12抗体に対する抗イディオタイプ抗体の作成に成功したが、確立した抗イディオタイプ抗体は 4G12抗体に対する内部イメージを有していることから、臨床への応用の可能性が示唆された。本年度においては4G12 モノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体を用いた肺癌の特異的活動免疫療法を行うための基礎的検討を行なっている。まず4G12モノクローナル抗体とマウスのLewis肺癌細胞との反応性を検討したところ、高い反応性が証明され、本研究の抗イディオタイプ抗体の基礎的検討が可能であることが明かとなった。そこでC57Blackマウス後足皮下にLewis肺癌細胞を投与し、生存率の向上に寄与するか否かにつき検討したところ、抗イディオタイプ抗体の前投与により生存率の延長がみられ、臨床応用の可能性が示唆された。その作用機序につき腫瘍細胞に対する細胞性並びに液性細胞傷害活性の面から検討中である。肺癌の組織型は4G12抗体の反応する扁平上皮癌のみでなく、腺癌、大細胞癌等多彩であることから、さらに広く腫瘍に反応性を示すモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体の作成も試みている。溶連菌産物のSK/SDに対する遅延型皮膚反応陽性例の予後は陰性例に比較して有意に良好である事から、その機序の解析のためSK/SDに対するモノクローナル抗体の作成に成功した。
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