研究概要 |
肺癌のリンパ行性進展の発生機構や病態に関して以下の知見が得られた。 1.活性型MMP-2(マトリックスメタロプロテアーゼ)は癌組織特異的に認め,活性化率はリンパ節転移陽性群において有意に高値であった. 2・MT(膜型)-MMPの癌部における過剰発現が認められた. 3・MMP-2活性化率とMT-MMPの発現は相関を示し,基底膜を破壊して転移していく過程が明かとなった. 4.転移陽性縦隔リンパ節のsinus histiocytosis(SH),follicular hyperplasia(FH)の程度は組織型と無関係であったが,腺癌ではSHの程度が高いほど,また,扁平上皮癌ではFHの程度が高いほど予後良好であった. 5.腫瘍径が同一の場合,PCNA標識率が高値のものの方が発癌から発見までの期間が短いと考えられ,腺癌ではTlでかつPCNA標識率が高値のもので転移を認めなかった. 6.PCNA標識率は腫瘍の動的状態を反映すると考えられ,空間的拡がり(進行度)の指標としてのTNM分類とは独立した因子と考えられた. 7.M109マウス肺癌を用いた進行肺癌治療モデルによる実験的検討では,術前全身化学療法および放射線照射施行群でリンパ切削転移や肺転移の減少が見られ,長期生存例を認めた.今後,有用な治療方となる可能性が示された. 8.術前化学療法施行群と非施行群でアポトーシス関連抗原Fas抗原の発現を免疫組織学的に検討した結果,化学療法によってアポトーシスが高率に誘導される可能性が示唆された.
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