研究概要 |
1.模擬循環(Mock)回路を用いた磁気浮上ポンプの特性試験 インペラー(羽根)とディフュザー(ポンプケーシング)を種々に組み合わせて、磁気浮上ポンプの特性試験を行った。ディフュザーについては、同じ圧力、同じ流量を得るための回転数は、直径50mmのポンプの方が少なく、また同じ回転数にすると、直径50mmのポンプの方が、40mmのポンプに比して、発生圧力は大きくなった。ただポンプのエネルギー効率としてはすこし減少する傾向にあった(50%→40%)が、市販の遠心ポンプの一つであるBiopump(B)のエネルギー効率が15%前後であることを考慮すれば、50mmでも問題はなく、むしろ血液を使用する場合は、回転数が少ないほうが有利であると判断し、50mmのポンプを溶血試験に用いることにした。さらにインペラーの形状については、インペラーの数の多いほど、ポンプ効率は高く、同じ圧力、同じ流量を得るための回転数は、少なくてすむことがわかった。成人用人工心臓の標準仕様は流量6l/min圧力120mmHgが必要といわれるが、現在本ポンプでは約2000回転でこの条件を満足し、最大駆出流量は100mmHgの圧力で約10l/minであった(回転数3500)。ポンプの耐久性については、連続運転で1週間は問題ないことが証明された。 2.血液用いた溶血試験 Mock回路にて新鮮牛血を用いて溶血試験を行い、Biopump(B)と比較検討した。ポンプ流量は5l/minで揚程は100mg、150mgの2つの条件を設定し、12時間の連続運転を行った。さらにポンプ構造の溶血に与える影響についても検討した.(構造の変化:a.インペラー(Inp)の枚数,b.インペラーとポンプケーシングとの隙間(gap)).測定項目は、a,free Hbの経時的な変化,およびIndex of Hemolysis(溶血のIndex) b,血小板の経時的変化 c,in-vitro回路内での経時的な温度変化,とした。結果は以下の通りである。 1)磁気浮上ポンプ(M)は従来の遠心ポンプより、100mg、150mgのいずれの揚程においても溶血の点で優れており、血小板の破壊も少なかった。また回路中の温度上昇は少なく、磁気浮上ポンプのエネルギー効率の良さを反映していた。 2)Mでは、インペラーの数の多いほうが溶血は少く、さらにgapの少ないほうが溶血が少なかった。つまりこのポンプの駆動においては、回転数をできるだけ少なくできるタイプにおいて溶血を減少せしめることができると思われた。 以上、in-vitroの実験では、磁気浮上ポンプは非常に有望であることが証明され、長期使用が可能であることが示唆された。来年度はin vivoでの実験を施行し、循環動態、血液凝固能、補体免疫系等の変動を解析し、生体内において長期(14日程度)の連続使用が可能であることを証明していきたい。
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