組織再生誘導材料による代用気管の研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454385
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 中村 達雄 京都大学, 生体医療工学研究センター, 助教授 (70227908)
• 研究分担者: 筏 義人 京都大学, 生体医療工学研究センター, 教授 (00025909) ; 人見 滋樹 京都大学, 胸部疾患研究所, 教授 (80173186) ; 清水 慶彦 京都大学, 生体医療工学研究センター, 教授 (00027111)
• キーワード: 人工食道 / 組織親和性材料 / 気管・気管支形成術 / コラーゲン / マーレックスメッシュ / 人工臓器

研究概要

1.前年度までに我々が独自に開発したコラーゲン処理(グラフト重合による固定化とコーティング)を加えたポリプロピレンメッシュ(fine Marlex 【○!R】 mesh)にポリプロピレンステントを固定化した全長5cmの人工気管を使用して、雑種成犬の胸腔内縦隔気管の置換実験を行った。これはこれまでに行った頸部気管での置換実験に比べ、より臨床応用に即したものであり、臨床での使用を行う前には不可欠な実験である。
この結果、前年度行った頸部気管での置換実験と同様に人工気管は生体気管と一体化し、吻合部の問題は見られず、また胸腔内気管では最も問題になると思われた気漏も認められなかった。さらに人工気管内腔も完全に上皮化することが確認された。
また、このとき有茎性大網による被覆を加えた群ではより良好な組織化が認められ、胸腔内気管での置換に際しての有茎性大網被覆の有用性が確認された。
2.前年度までの人工気管より良好な組織化とさらに迅速な上皮化を目指して、改良型の人工気管を開発した。これは1.と同じポリプロピレンメッシュとポリプロピレンステントによる基材を従来のコラーゲン処理ではなく、コラーゲンスポンジによりサンドイッチしたものである。これによりこれまでの人工気管で一部に見られた潰瘍形成と内腔の狭窄傾向を改善させることを目指した。現在雑種成犬を用いた動物実験を開始し、経過観察中である。

研究成果

• [文献書誌] Norihito Okumura: "A New Tracheal Prosthesis Made from Collagen Grafted Mesh" ASAIO Journal. 39(3). M475-M479 (1993)
• [文献書誌] 奥村典仁: "コラーゲン加工メッシュ製人工気管の実験的研究-高張力下での吻合に関して-" 人工臓器. 22(3). 1025-1030 (1993)
• [文献書誌] 奥村典仁: "人工気管による気道再建の研究" 気管支学. 15(8). 772-777 (1993)
• [文献書誌] Norihito Okumura: "Experimental Study on a New Tracheal Prosthesis Made from Collagen-Conjugated Mesh" The Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery. (in print).
• [文献書誌] Norihito Okumura: "Experimental Study on a New Tracheal Prosthesis Made from Collagen-grafted Mesh" ASAIO Abstracts. 102 (1993)
• [文献書誌] 奥村典仁: "人工気管による気道再建の研究" 気管支学. 15(4). 318 (1993)
• [文献書誌] 奥村典仁: "コラーゲン加工メッシュ製人工気管の実験的研究" 日本胸部外科学会雑誌. 41(臨時増刊号). 401 (1993)
• [文献書誌] 奥村典仁: "コラーゲン加工メッシュ製人工気管の実験的研究-胸腔内気管への応用に関して-" 第31回日本人工臓器学会大会 予稿集. 163 (1993)
• [文献書誌] 清水慶彦: "生体内吸収性材料の臨床応用" Progress in Medicine. 13(11). 2595-2598 (1993)
• [文献書誌] Norihito Okumura: "Experimental Reconstruction of the Intrathoracic Trachea Using a New Prosthesis Made from Collagen-grafted Mesh" Preliminary Program of ASAIO Meeting. 18 (1994)