われわれは、心臓内視鏡により生体における弁輪運動の直視下観察を行い、房室弁閉鎖機構における弁輪運動の解明を行なっている。 1.三尖弁の弁輪運動の観察 (1)正常三尖弁輪は、心房収縮期に7%拡張し心室収縮期に34%縮小した。自由壁側弁輪は、長さの短縮とともに求心性に収縮し、中隔側弁輪は自由壁側に向かう移動運動を示した。また、交連部の柔軟性が自由壁側と中隔側弁輪の近接を可能にしていた。慢性三尖弁閉鎖不全では、弁輪縮小率は20%と減少した。 (2)房室弁閉鎖機構における心室収縮期での弁輪運動の意義は、弁のcoaptation zoneをより強固なものとし、逆流を防止するための予備力を生み出すことと考えられる。また、心房収縮期における弁輪拡張運動は心室充満期における流入抵抗を減弱させる可能性がある。したがって、弁輪運動を温存することは極めて有意義であり、その意味でDe Vega法、Flexible ring法は理想的である。 2.僧帽弁の弁輪運動の観察 (1)正常僧帽弁輪でも、三尖弁弁輪運動と同様の傾向がみられるが、成犬の個体差が大きく結論を得るには至っていない。 (2)慢性僧帽弁閉鎖不全モデルを作成し、正常僧帽弁輪運動との比較、弁形成術など外科手技の妥当性を検討中である。 3.人工弁運動の生体における観察 日常臨床において用いている人工弁(機械弁)の、生体における実際の動きに関しては不明な点がある。特に、弁の挿入方向とその弁葉の動きとの関連を検討する予定である。
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