研究概要 |
我々は主に乳癌及び肺癌の再発患者を用いて,非修飾型のヒト型モノクローナル抗体を投与してきた.用いた抗体は,はじめの予定と異なりGalβ1-4GlcNAcβ1-Rの末端2糖を認識しているSI-1は,白血球減少等の副作用が強いため,投与を途中で断念し,Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-Rを認識しているSI-5及びGalβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glcβ1-Rを認識しているMH21-134の2抗体を用いた.informed consentの問題もあり,再発または遠隔転移を持つ症例でしか行えなかったので,奏効率は20%(3/15)にすぎなかった.非修飾抗体だで好成績をあげるためには,Koprowskiらの作成した17-1A抗体の大腸癌患者にみられるように,対象腫瘍が既に肉眼的に切除された症例であることが望ましいと考えられる.また,研究以前に予測したのと異なり,主な糖鎖抗原の変化としては,DCH・DTHなどが増加してくる不全現象はほとんどみられず,むしろ糖鎖を延長させる方向であるaberrant glycosylationの方が優位を示した.特にシアル酸の付加されら酸性糖鎖への変化が著明であった.このことは,より悪性度の高い腫瘍細胞が,Sialy Le^xやSialy Le^aなどのセレクチンファミリーのリガンドを有しているとの多数の報告とも結びつき,非常に興味深い現象といえる.そこでこれからの研究の展開としては,このようなgangliosideに対する抗体をも含んだカクテル療法が望まれる.また,外科切除後の症例でない限り,多種類の抗体を用いたカクテル療法とはいえ,あまり有効ではなく,抗癌剤などの修飾を行った抗体療法が望ましい.
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