我々は、これまで悪性脳腫瘍の局所温熱療法に用いるRF加温装置の試作開発及び、脳腫瘍への応用に関する研究を進めつつ、これらが臨床でも安全に脳腫瘍に応用できることを報告して来た。一方、我々は設定された温度に達すると予め封入された抗癌剤を腫瘍局所で放出する熱感受性リポソームを用いるターゲッティング化学療法を検討してきたが、適切な温度を設定すると極めて有効な新しい化学温熱療法となり得ることを報告した。現在のところリポソームそのものの研究が少数みられるのみであり、とりわけ脳腫瘍の治療に関しては安定した脳内局所加温の技術を要するためほとんど研究はみられない。我々が用いるのはより安全でより充分な脳腫瘍の加温が可能である我々の開発したRF針型組織内アプリケータであり、これによる温熱療法の治療効果に加えて、熱感受性リポソームを用いて加温部位にのみ抗癌剤を集中させ全身への副作用を軽減させ得る新しいターゲッティング化学温熱療法の可能性につき検討する。 これまで本法の効果について、1)マウス皮下腫瘍におけるリポソームの集積性および抗腫瘍効果、次に2)ラット正常脳内におけるリポソームの集積性と、順次確認してきたが、本年度は次の段階として、リポソームに封入された抗癌剤(CDDP)のラット脳腫瘍内への高い集積が確認され、同時に著明な抗腫瘍効果が得られた。これらの結果から、脳腫瘍に対するターゲッティング温熱化学療法としての本法の可能性が一層高まったと考えられる。
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