悪性脳腫瘍の細胞内情報伝達機構と治療開発に関する基礎的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454398
• 研究機関: 島根医科大学
• 研究代表者: 山崎 俊樹 島根医科大学, 医学部, 助教授 (50201835)
• 研究分担者: 長尾 聖一 島根医科大学, 医学部, 助手 (80180454) ; 亀井 勉 (財)島根難病研究所研究局, 研究部長 ; 榎本 浩一 島根医科大学, 医学部, 助手 (70112125)
• キーワード: 脳腫瘍 / カルシウムシグナル / 神経インパルス / 癌遺伝子 / 主要組織適合複合体抗原 / 分子生物学 / 高齢化 / 画像診断

研究概要

【基礎研究】
1.神経膠腫の増殖プロモーションとカルシウムシグナル機構をマウス悪性神経膠腫株を用い、独自に開発した顕微鏡下単一細胞の機械的刺激による細胞増殖システム系から世界に先駆けて検討した。そして、神経膠腫では膜リセプターの関与する伝達機構の異常で細胞間カルシウムシグナルの調節性が失われ細胞増殖が生じることを発見した。
2.主要組織適合複合体(MHC)抗原遺伝子の発現性が乏しいという特性に起因する脳局所における疫監視機構の特殊性を分子生物学的見地から世界に先駆けて報告した。
【臨床研究】
1.定位脳手術の安定性を更に向上させるため、超音波ドプラと脳内視鏡を組み合わせた術中モニター法を世界に先駆けて開発し、その臨床的有用性を報告した。
2.脳腫瘍診断における各種トレーサーを組み合わせたSPECT画像による診断価値と役割に関する臨的意義について検討した。
3.悪性神経膠腫、リンパ腫、転移性脳腫瘍など悪性脳腫瘍の集学的治療に関する治療効果を各腫瘍別に検討した。特に、抗癌剤のdrug delivery systemの概念を考慮した動注化学療法や局所薬剤注入療法など局所制御の重要性を報告した。
4.島根県は全国一の高齢化県であり、70才以上の人口割合は13.7%を数え、また高齢者における癌患率も上昇している。成人病医学研究の一環として島根県における高齢化地域の特性を考慮し、特に悪性神経膠腫、リンパ腫、転移性脳腫瘍の疫学調査・治療および管理上の問題点を全国集計調査と比較検討した。

研究成果

• [文献書誌] Yamasaki T: "Analysis of intra- and intercellular calcium signaling in a mouse malignant glioma cell line." Journal of Neurosurgery. 81. 420-426 (1994)
• [文献書誌] Yamasaki T: "Intraoperative use of Doppler ultrasound and endoscopic monitoring in the stereotactic biopsy of malignant brain tumors." Journal of Neurosurgery. 80. 570-575 (1994)
• [文献書誌] Yamasaki T: "Intratumoral administration of tumor necrosis factor-α for malignant gliomas.-Two case reports-." Neurologia medico-chirurgica. 34. 216-220 (1994)
• [文献書誌] 山崎俊樹: "培養株化神経細胞の膜電位と興奮性インパルスに及ぼすカルシウム拮抗剤(Nilvadipine)の影響" 脳神経外科. 22. 327-331 (1994)
• [文献書誌] 山崎俊樹: "神経電気活動に及ぼす腫瘍壊死因子の作用に関する基礎的検討." 医学のあゆみ. (印刷中).
• [文献書誌] Yamasaki T: "Brain Tumor Research and Therapy" Nagai M 編集,Springer-Verlag press 社 (in press),
• [文献書誌] Yamasaki T: "Clinical PET in Oncology" Matsuzawa T 編集,World Scientific press 社, 6 (1993)