脳静脈血行障害に伴う脳循環および脳代謝障害を調べるため、2.5〜4kgの成猫を用いて全身麻酔、人工呼吸下に上矢状静脈洞を前後2カ所で露出し、それよりシアノアクリレートを注入し、静脈洞およびそれに連続する皮質静脈を閉塞した。その後、15分、30分、60分、2時間後にC^<14>-ヨードアンチピリン静注によるオートラジオグラムにて脳血流を、また15分、30分後にC^<14>-ジオキシグルコース注入によるオートラジオグラムにて脳の糖代謝を調べた。さらに病理学的所見と対比検討した。そしてシアノアクリレートによる閉塞程度により静脈洞のみの閉塞群、皮質静脈1本、および2本閉塞の群に分けて検討した。その結果、静脈洞のみの閉塞では2時間後にも脳血流の低下なく、代謝も障害されず病理学的にも異常は生じなかった。しかし、一度皮質静脈内にシアノアクリレートが流れ込むと重大な循環、代謝障害が生じ、2本以上となれば出血を伴う静脈梗塞が生じた。以上から、静脈洞血栓症を初めとする脳静脈血行障害では、脳皮質静脈に血栓が生じると重大な結果を招くので、これの予防が治療の上で大切であることがわかった。
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