研究課題/領域番号 |
05454403
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
脳神経外科学
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 潔 順天堂大学, 医学部, 教授 (10112707)
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研究分担者 |
宮嶋 雅一 順天堂大学, 医学部, 助手 (60200177)
須田 喜久夫 順天堂大学, 医学部, 助手 (00206559)
武田 信昭 順天堂大学, 医学部, 助手 (00171645)
新田 泰三 順天堂大学, 医学部, 講師 (80172724)
新井 一 順天堂大学, 医学部, 助教授 (70167229)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 先天性水頭症 / 前脳基底野コリン作動性神経 / 神経成長因子 / サイトカイン / C-type natriuretic peptide / 頭蓋内圧 / 髄液吸収抵抗 / 先天性水頭症ラットHTX |
研究概要 |
(1)先天性水頭症の脳では水頭症の進行により、記憶や学習能に関係があるとされる前脳基底野コリン作動性神経の発達が障害を受けることが明らかになった。この成果は、既に私達が先天性水頭症に対する治療が遅れると、ラットの学習能が障害されることを神経化学的に証明し得たもと考えられる。さらに前脳基底野コリン作動性神経の発達が障害に際し、その生存と発達に関係があるとされるNGFの増加をみたことと神経栄養因子の増加作用のあるサイトカイン遺伝子の発現をみたことは興味深い。これは水頭症により前脳基底野コリン作動性神経と頭頂一後頭葉皮質とのシナプス形成が障害され、NGFの逆行性軸索輸送が障害を受けた可能性、また、頭頂一後頭葉皮質の神経細胞障害に反応してグリアの増殖が起こり、この反応性グリアからNGFやサイトカインが分泌される可能性を強く示唆する所見と考えられる。 (2)C-type natriuretic peptideの脳室内注入により頭蓋内圧の急速な低下と髄液吸収抵抗値低下を認めた。このは頭蓋内圧の低下は髄液産生抑制よりむしろ髄液吸収抵増加による可能性を示唆する。この結果よりC-type natriuretic peptideは先天性水頭症に対する新しい治療法の候補の一つとなりうると思われる。C-type natriuretic peptideはもともと脳に存在するホルモンでグリア細胞を介して、脳のホメオス-タシスに関与していると推定されるが、その生理的作用の解明にはさらなる研究が必要である。 (3)ヒトの遺伝性水頭症の一つであるX-linked hydrocephalusの原因遺伝子として、細胞接着因子のL1が明らかとなったが、先天性水頭症ラットHTXでは同遺伝子の異常は認められなかった。しかし、先天性水頭症ラットHTXではWisterラットに比べC-type natriuretic peptideの機能的receptor遺伝子の発現が低く、非機能的receptor遺伝子の発現が高値を示していた。このことはC-type natriuretic peptide receptorの発現調節に関する転写因子の遺伝子異常が推定されるが、今後のさらなる研究が必要である。
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