研究概要 |
滑膜肉腫、類上皮肉腫等の上皮性格を示す骨軟部悪性腫瘍を中心に研究を進め、今年度は以下の結果を得た。 1.前年度に分析した3例に加え、今年度は新たに2例の滑膜肉腫において特異的染色体転座t(X;18)(p11;q11)が認められた。即ち、t(X;18)は、分析した滑膜肉腫の5例全例に確認されたことからその特異性は高く、滑膜肉腫の細胞遺伝学的診断マーカーとして極めて有用であると考えられた。 2.t(X;18)転座切断点のクローニングにより、Xp11と18q11にそれぞれSSXおよびSYT遺伝子が英国がん研究所の共同研究グループにより同定され、その発現をRT-PCRにより上記の5例において検索したところ、全例においてSSX/SYT再配列遺伝子の発現が確認された。この再配列遺伝子発現はt(X;18)転座と完全に対応し、滑膜肉腫以外の骨軟部悪性腫瘍においては全く認められなかった。この知見は、染色体分析によらず、RT-PCRを用いた滑膜肉腫の遺伝子診断への道を開くものである。 3.上皮性格の実体を探るためのケラチン遺伝子発現の検索を、前年度に続き6種類のケラチン遺伝子(CK1,CK8,CK10,CK14,CK18,CK19)についてRT-PCRを用いて行った。滑膜肉腫、類上皮肉腫の外、上皮性格の知られているラブドイド腫瘍、そして上皮性格の不明な横紋筋肉種などにおいて種々のケラチン遺伝子mRNAの発現が認められた。 4.動物ゲノム中に広く分布することが知られているCA繰り返し配列を用いた分析により、骨軟部悪性腫瘍細胞のゲノム不安定性が多くの症例で示唆された。
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