全国各地域の16施設の協力を得て、平成3年4月より平成5年3月の間に診断が確定した骨肉腫患者57例の血液の提供を受けた。このうち発症に遺伝的要素の関与が否定的な高年齢での発症例を除いて発症年齢30歳未満の骨肉腫症例43例を研究の対象とした。 得られたDNAサンプルのうち解析に使用できたのは43例のうち32例であった。他のサンプルは採血の方法と輸送に要した時間などの問題のためにDNAが抽出困難であったり、分解してしまっているために解析が不能であった。貴重なサンプルが無駄になった事はこのような多施設での研究にとっては非常に残念な事であり今後の教訓としたい。 解析された32例のうち1例(3.1%)のみに異常が発見された。解析されたサンプル数は決して充分ではないが、1例の突然変異が検出されたことは大変有意義であった。突然変異の頻度は他の報告から予想された結果と概ね一致しており、決して低いとは言えない。この1例は22歳の女性であり特に若年齢発症の癌や肉腫の家族歴はなく、臨床経過においても治療後再発は認めていないが今後慎重な経過観察を要する。また両親の遺伝子の解析については同意が得られずしたがって新生配偶子性突然変異かどうかは不明である。発見された突然変異はcodon158のCGC(Arg)→CTC(Leu)の置換であり、系統間で保存されているアミノ酸であった。この変異は配偶子性突然変異としてはこれまでに報告がないものの肉腫を含む悪性腫瘍の体細胞性突然変異としては報告があり、腫瘍の発症に意義を持つものとおもわれた。
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