1.変形性関節症(OA)軟骨組織におけるHSP70の局在:手術時に得られたヒトOA軟骨組織に対し抗HSP70モノクローナル抗体を用いて免疫組織化学を行なった。局在はOAの組織学的重症度と相関して関節面の表層から深層へ拡がっていた。2.軟骨細胞に対する圧力ストレスの影響:ヒト軟骨細胞様細胞株に対して0〜50Mpaの静水圧を負荷した。圧負荷後、polymerase chain reaction(PCR)およびNorthern blot法を行なった。PCRでは圧負荷後、IGF-IおよびbFGFmRNAの発現に変動が認められた。Northern blotではTGF β 1mRNAは5Mpaの圧力を負荷した後より、4〜8時間で発現が亢進したが、50Mpaの圧負荷後は逆に発現が抑制されていた。また、HSP70mRNAは50Mpaの圧負荷後、速やかに発現が亢進した。35S sulfate取込みによるプロテオグリカン代謝測定では、1〜5Mpaの圧負荷後、代謝が亢進し、10〜50Mpaの圧負荷後は代謝が減少していた。これらのことより、圧力ストレスが軟骨代謝を亢進させるサイトカインの発現を変動させて軟骨基質の維持に働いていること、HSP70を誘導する圧力ストレスは軟骨代謝に負の影響を与えることを示した。3.OA自然発生マウスに対するPCRによる検討:6カ月齢以上のOA自然発生ブラックマウス(Silberberg)の膝軟骨組織より、total RNAを抽出し、各種サイトカインおよびHSPに対するPCRを行なった。OAマウスでは対照群と比較してIL-6、IFN_γ、HSP47、70および86のmRNA発現が有意に高かった。これらのことは、様々なHSPがOA初期のmRNAレベルにおいても、その発症、進行を表す指標となり得ることを示している。また、OA初期におけるHSPの発現が、IL-6、IFN_γなどのサイトカインの発現と関連があることを統計的に示した。
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