研究概要 |
全脳虚血後脳障害の回復機構に、細胞障害からの防御、修復機能に重要な意味を有するとされるストレス蛋白(HSP)が関与するか否かを検討し、さらに完全全脳虚血に対する高圧酸素療法の有効性とHSPとの関係を調べるべく、本研究を行った。 従来我々は完全全脳虚血モデルを犬で完成し、種々の薬物療法、低体温法、高圧酸素療法、等の有効性につき検討し成果を上げてきたが、今回HSP測定のためには、抗原-抗体反応による組織学的方法を用いるため、犬では大きすぎ脳還流固定が難しくまた高価なHSP抗体を大量に用いることになること、最近犬の安定した供給が難しいことのために、小動物を用いなければならなくなった。そこでモルモットを用いての完全全脳虚血モデル(これまでに報告がない)作製にとりかかり、ようやく我々独自の方法を完成した。即ち、ワイヤーにてL型釣り挙げ鈎を作り、これを小孔を通し第二肋間胸骨右縁より縦隔に挿入し大動脈背側に滑り込ませ釣り挙げることにより、大動脈を胸骨と鈎の間で圧迫し遮断し完全全脳虚血とする法である。この方法にて、レーザードプラー法にて脳血流が無くなり脳波が平坦化して完全全脳虚血となること、組織学的にも海属領域を中心に脳虚血状態が出現する事を証明した。さらにこのモルモットは数日-1週間の生存が可能である。この成果は第13回日本蘇生学会総会(平成6年)で発表した。現在このモデルを用い、5分間の虚血負荷を行い、治療を行わない群、虚血後高圧酸素療法群(3気圧、1時間:当日1回、次日2回)、虚血負荷をせずSham手術のみの群、にてHSP25,60,70,の検出を行っており、各群数例終了したところである。
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