研究概要 |
当初の研究計画にしたがって成犬の摘出肺を作成し肺血管系へのカテコーラミンであるエピネフリンとノルエピネフリンの直接作用を検討した。すなわちエピネフリンとノルエピネフリンの各用量に対する肺血管抵抗の肺長軸上の分布と肺血管透過性について検討した。肺微小血管の透過性を濾過係数(Kf,c)ならびに Isogravimetric capillary pressure(Pc,i)を用いて求めた。その結果、エピネフリン(100-330μg)投与後3-6分に肺毛細管圧は約4-5mmHg上昇するとともに肺血管抵抗は3-4倍に増加した。また、前毛細血管抵抗の後毛細血管抵抗に対する比も投与前値に比べ減少し静脈側の血管収縮が優位であることが示唆された。肺重量は肺毛細管圧の上昇にもかかわらず投与直後に減少し、その後も投与前値に比べ低値を持続した。また、肺血管透過性については投与後30分と60分に測定した濾過係数は投与前に比べて有意な変化を認めなかった。またPc,iも上昇しなかった。一方、ノルエピネフリン(100-300μg)の肺血管反応もエピネフリンと同様であったがエピネフリンの方がより肺静脈側を収縮することが示された。以上より、カテコラミンは高濃度を投与しても直接には肺血管透過性を亢進せずそれ自体では肺水腫を惹起しえない可能性が示唆されたする結果が得られた。一方、エピネフリンならびにノルエピネフリンともに肺毛細管圧を上昇させるためにこの作用により肺血管外へ水分濾過を増加させ肺水腫形成に関与している可能性も示唆された。 肺に分枝する交感神経を選択的に電気刺激した際の肺血管反応については現在検討中である。
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