研究概要 |
家兎の摘出灌流肺を用いて星状神経節の節後神経を電気刺激した際の肺血管透過性の変化について検討した。in vivoの状態であらかじめ摘出する前に星状神経節の節後線維の電気刺激に対して肺動脈圧の上昇を確認したのち摘出肺において電気刺激を行った。肺動脈圧は左外頸静脈から外径2mmのポリエチレンチューブを肺動脈に挿入し記録した。電気刺激は電圧10ボルト、刺激頻度5,10,20Hzの刺激条件で行った。その結果、肺動脈圧は拡張期圧の増加はわずかであったが収縮期圧は刺激頻度依存性に増加反応を示、10〜50Hzで5〜10mmHgの上昇を認めた。in vivoでの電気刺激実験の後、直ちに全肺を摘出し肺動脈および左心房にカニュレーション後星状神経の節後線維を付着させたまま心臓-肺を一塊にして摘出し95%O2,5%CO2の混合ガスで人工換気し、5%albumin・krebs液で希釈したヘパリン加自家血液を用いてZone IIIの状態で定流量潅流した。しかしながら、肺摘出前と同じ電気刺激条件で認められた肺動脈圧の変化はみられなかった。さらに電圧を20ボルトに増加させても肺血管抵抗に変化は見られなかった。電気刺激後に濾過係数、Kf,cを測定するも電気刺激前と比べて変化はなく、血管透過性のに変化はなかった。また、Kf,c測定の肺静脈圧上昇時に電気刺激を行ってもやはり肺血管収縮は見られなかった。さらにイヌの摘出潅流肺を用いて星状神経節の節後神経を電気刺激した際の肺血管透過性の変化について検討した。家兎の成績と同様にin vivoでの電気刺激においても変化はみられなかった。以上のイヌと兎を用いた摘出潅流肺では肺を支配する交感神経を電気刺激しても肺血管透過性と肺血管内静水圧には有意の変化はみれないことが示された。この成績は血管透過性の変化を血管内圧の変化から分離させて評価するために摘出潅流肺で行ったという制限はあるが、肺支配の交感神経は肺循環、特に肺血管透過性の制御には大きな働きを有しないものと考える。しかし、今後さらにin vivoのwhole animalでの検討が必要と思われる。
|