研究概要 |
c-erbB-2遺伝子は泌尿器癌では膀胱癌または精巣腫瘍で過剰発現し,癌の増殖と進展への関与が示唆されている。本遺伝子産物は受容体型膜蛋白であるため,その活性化のためにはリガンドの結合が必要である。最近クローニングされたhuman NDFはc-erbB-2のリガンドのひとつと考えられている。そこで膀胱癌においてc-erbB-2とhuman NDFの発現を検索し,両者の相互作用について検討した。 膀胱癌と正常粘膜から抽出したDNAとRNAをサンプルとして,human NDFのcDNAをプローブとしたサザンブロットハイブリダイゼーションにより遺伝子の解析を行うとともに,cDNAの塩基配列をもとにオリゴヌクレオチドプライマーを合成し,RT-PCRによりhuman NDFの発現を検索した。 その結果,膀胱癌ではc-erbB-2とhuman NDF遺伝子に増幅あるいは再編成といった異常は認められなかった。RT-PCRでは膀胱癌と正常組織の全てにc-erbB-2の発現がみられたが,正常組織より癌に発現量が多かった。また,human NDFも膀胱癌,正常組織ならびに膀胱癌株細胞(5637)において低レベルの発現がみられた。以上の結果から,膀胱癌にはc-erbB-2とhuman NDFの自己分泌機構が存在すると考えられた。
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