研究概要 |
泌尿器癌におけるc-erbB-2遺伝子とhuman NDF遺伝子の関与について検討した。 膀胱癌におけるc-erbB-2遺伝子の増幅と過剰発現とNDF遺伝子の発現を検索した。膀胱癌ではc-erbB-2とhuman NDF遺伝子に再編成は認められなかった。c-erbB-2遺伝子の発現は膀胱癌と正常組織の全てでみられたが,正常組織より癌に発現量が多かった。また,human NDF遺伝子も膀胱癌,正常組織ならびに膀胱癌株細胞(5637)において低レベルの発現がみられた。この結果から、膀胱癌にはc-erbB-2とhuman NDFの自己分泌機構が存在することが示唆された。 Human NDFは受容体型膜蛋白c-erbB-2のリガンドとみなされているが,c-erbB-2の活性化のためには受容体型膜蛋白HER4の存在が必要とされている。そこで、腎細胞癌におけるこれら3種の遺伝子の発現を検索し,それらの相互作用を検討してみた。その結果、腎細胞癌(20例)ではhuman NDF遺伝子の過剰発現を1例(5%)に認めたが,c-erbB-2遺伝子の過剰発現は認められなかった。一方,HER4遺伝子は正常腎組織ではすべてで発現を認めたが,癌組織では発現を検出できなかった。human NDF過剰発現の1例では,c-erbB-2遺伝子の発現は正常組織に比較して低レベルであった。これらのことから、腎細胞癌の増殖と進展にはhuman NDFとc-erbB-2の自己分泌機構の関与は少ないと考えられた。 これらの知見は第28回と第29回の日本癌治療学会総会で発表した。
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