研究概要 |
今までの観点とは異なった観点から前立線肥大症の発症病理を究明し、新たな前立腺肥大症薬物療法の開発理論を樹立することが本研究の最終到達点であるが、平成5年度、6年度において以下の成果が得られた。 1)動物モデルを用いての雄性副性器間質増殖メカニズムの解明:幼若(3週齢)にて去勢されたラットにエストロジェンを投与すると、精嚢に著しい間質増殖がおこる。この間質増殖はコラーゲンと平滑筋の増生が主因であり、組織像がヒト前立腺肥大症の組織と非常に類似していることを我々はまず確かめた(湯浅、山中ら、泌尿紀要,39,1993).さらにこの動物モデルをもちいて、エストロジェン投与後の間質組織像の経時的変化をイメージアナライザーにより定量的解析し、コラーゲンと平滑筋の増生が平行しておこることを確かめた。(小野、湯浅ら、Tohoku J.Exp.Med,175,1995).さらにエストロジェン投与により誘導されるestrogen receptor(ER)の変動について、EIA法、免疫組織学的手法およびRT-PCR法をもちいて検討し、エストロジェンによるコラーゲン、平滑筋の増生はERを介しておこることを明らかにした(湯浅、山中ら、1995)。 2)ヒト前立腺肥大症間質培養細胞のコラーゲン産生の解析:ヒト前立腺肥大症組織由来の間質細胞の無血清培地3日間培養法で、その培養上清中のプロコラーゲンC末端ペプチド(PIP)産生量をenzyme immuno-assay法により検討した。単位細胞あたりのPIP産生量はDHT濃度依存性に減少し、DHT濃度10^<-6>Mでは対照の38%であった。このことは前立腺内のアンドロジェンが前立腺肥大症間質のコラーゲン産生制御に直接的に影響をあたえていることを示唆したが(深堀、山中ら、1995)。しかし、エストロジェンは直接的にPIP産生に関わっていなかった(深堀、山中、1994)。
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