研究概要 |
本年度はヒト前立腺組織におけるα_1アドレナリン受容体サブタイプ(1a,1b,1d)の発現量をRNase protection assay法で、また局在をin situ hybridization法で検討し、臨床病理学的事項との相関を検討した。 【症例】前立腺摘出術を施工した前立腺肥大症例12例(年齢±S.D,;68.7±7.6歳、前立腺重量;27gから100g)より、標本の採取を行った。また、膀胱腫瘍で、明らかな前立腺肥大症の無い症例4例(年齢±S.D.;61.3±9.56歳)の前立腺組織(非肥大前立腺組織)も採取した。標本は直ちに、またはOCTコンパウンドに包埋して、液体窒素にて凍結後、実験に使用するまで-130℃に保存した。 【方法】mRNAの定量実験にはα_1-アドレナリン受容体サブタイプについて、相同性の少ないC末端領域のDNA(それぞれ約300bp)をRNA転写用ベクターに組み込み、これを用いて[α-^<32>P]UTPで標識されたアンチセンスRNAプローブを作製した。このプローブを用い、ヒト肥大前立腺組織ならびに非肥大し前立腺組織から調整したpoly(A+)RNAのRNase protection assayを行った。mRNAの局在は、同じくC末端領域からdigoxigeninラベルのRNAプローブを作製し、10μmの凍結切片でin situ hybridizationを行い、digoxigenin-ELISA法にて検出した。 【結果ならびにまとめ】ヒト肥大前立腺組織におけるアドレナリン受容体のサブタイプはα_<1a>が優位であり、α_<1a>(85%)>α_<1d>(15%)≫α_<1b>(ほとんど検出されない)の順に発現していた。しかし、前立腺重量ならびに年齢との相関は現在のところ認めていない。局在はα_<1a>、α_<1d>とも主に間質の筋組織に主に見られた。α_<1a>とα_<1d>の結合部位はこれら筋細胞では部位的差異ははっきりしない。また、非肥大前立腺組織ではα_<1a>(63%)>α_<1d>(29%)≫α_<1b>(8%)であった。全α_1mRNAの量は肥大前立腺組織が非肥大前立腺組織に比べて6倍であり、各サブタイプでは肥大前立腺組織の方がα_<1a>mRNA量で8倍、α_<1d>mRNA量で3倍で多く認められた。
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