研究概要 |
1.表在性膀胱腫瘍に対する経尿道的手術への応用 計24例(男性20例,女性4例,33〜88歳)の表在性膀胱腫瘍に対して,経尿道的超音波吸引を施行した。前年度までに24Frの専用内視鏡を使用して,問題となる出血も無く,小腫瘍であれば吸引除去が可能であることを確認していた。今年度はプローブの先端形状を匙型,メス型に改良し,膀胱筋層までの超音波吸引を施行した。出血はプローブに装備した高周波電流による止血装置で充分対処可能であり,振幅を200μm以上,振幅を“強"にすれば筋層までの吸引除去が可能であった。但し,振幅を強くすると吸引部周囲の粘膜に浮腫を生じ,腫瘍と正常粘膜との境界が不明瞭になることがあった。匙型,メス型とも,吸引された組織は病理診断可能であり,膀胱腫瘍に対する経尿道的超音波吸引は臨床的に応用可能な安全な方法と考えられた。 2.腹腔鏡手術・後腹膜腔鏡手術への応用 前立腺癌のstaging operationとして,腹腔鏡下閉鎖リンパ節生検(10例)に超音波吸引装置を使用した。リンパ節は脂肪組織に囲まれており,外腸骨動静脈などの血管が隣接しているため,安全に脂肪組織を除去するのに有用であり,手術時間の短縮にもつながると考えられた。しかし吸引により腹腔内のCO_2ガスが吸引されてしまうため,一定の腹腔内圧を保つにわ高速の気腹装置が必要であった。後腹腔鏡手術として2例の腎摘出術を施行した。腎を取り出すための小切開をあらかじめ加えて,CO_2ガスによる気腹をせずに施行した。後腹膜腔は狭く,腎の剥離に難渋したが,腎周囲脂肪組織の除去,特に腎茎部の露出には超音波吸引装置が有効であった。なお狭い術野で施行するため,超音波吸引による灌流水の飛沫が内視鏡レンズに付着しやすく,時に視野を妨げられることがあった。
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