研究概要 |
1.泌尿器科内視鏡手術に応用すべく,従来使用されている超音波吸引装置を改良した。プローブを内視鏡下で使用できるように長くするとともに,先端形状をストレート,テ-パ,匙型,メス型とした。更にプローブに高周波電流による止血凝固機能を装備した。 2.雑種成犬を用いた実験では,超音波出力範囲を150-200μmに上げることで前立腺,膀胱が良好に吸引できた。吸引部組織温度は最高で42℃であった。吸引時認められたcavitationも局所的であり,すぐに消失した。吸引された組織の組織学的検査は可能であった。更に豚を使用して腹腔鏡下骨盤リンパ節切除術及び腎摘出術を施行し,超音波吸引装置が脂肪組織除去や腎茎部露出に安全で有用であることを確認した。 3.24Frの硬性鏡に漏電防止装置を施し,プローブの横ぶれを防ぐためスタビライザーを装着した上で,前立腺肥大症6例,膀胱腫瘍24例の経尿道的手術に本装置を応用した。前立腺肥大症では,組織は除去できるが,視野が出血により妨げられ,かつ手術時間が延長し,臨床的有用性は少なかった。膀胱腫瘍は良好に削切・吸引された。先端が,匙型,メス型のプローブの使用で,膀胱筋層の吸引除去も可能であった。切除片の病理組織診断が可能で,穿孔などの危険も少なく,臨床的使用に耐えうることが明らかとなった。 4.腹腔鏡下閉鎖リンパ節生検10例,後腹膜腔鏡下腎摘出術2例に超音波吸引装置を使用した。リンパ節生検では,血管を損傷せずに安全に脂肪組織を除去するのに有用で,手術時間の短縮につながると考えられた。しかし腹腔内のガスが吸引されてしまうため,高速の気腹装置が必要であった。後腹膜腔鏡下腎摘出術では,腎を取り出すための小切開をあらかじめ加えて,気腹をせずに施行した。後腹膜腔は狭く,腎の剥離に難渋したが,超音波吸引装置による脂肪組織の除去が有効であった。
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