羊胎仔仮死慢性実験モデルを作製した。胎仔仮死の作製に際し、母獣に窒素ガスを吸引し、低酸素状態を、さらに臍帯オクルーダにより臍帯圧迫を繰り返し、アシデミアの状態を作製した。双極誘導にて胎仔心電図をモニターしR-R間隔のゆらぎをスペクトル解析できるソフトを新しく考案し、解析した。正常羊胎仔では0.05-0.1cycle/beatのlow frequency areaに大きなピークが認められた。このピークはアトロピンでそのdensityが減弱、α-ブロッカーにても減弱、β-ブロッカー投与により完全に消失した。すなわち、このピークは主に胎仔の交感神経活動を、一部副交換神経活動を示すピークであることが判明した。 母獣に対し窒素を投与すると胎仔はnonacidemic hypoxemiaとなった。さらに臍帯圧迫を加えるとacidemiaとなった。この際、半導体レーザー式組織血流計にて測定した脳内血流も低下していた。nonacidemic hypoxemiaではlow frequency peakのdensityは著しく減弱し、その減少の程度は血中酸素濃度の減少を予測する良い指標となりうることが判明した。さらに臍帯圧迫によるacidemiaにおいてはlow frequency peakのほぼ消失が観察される一方、pH7.20以下になるとスペクトル自体が変化し0.1-0.3cycle/beatの周波数帯のピークが増大した。以上より、nonacidemic hypoxemiaにおいて交感神経活動が抑制され、さらなるacidemiaになると心拍制御のスペクトルは正常とは全く異なったパターンを示すことが判明した。現在、臨床応用を目指した研究を続行中である。
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