研究概要 |
今日、生殖技術は急速に発展しつつあり、また、不妊症治療への貢献は多大なものとなっている。しかし、本来それら技術の応用に先立つべき基礎的知識、特に着床周辺期の知見は圧倒的に欠乏している。 一連の受精・着床現象の解明が遅れている要因のひとつとして、取り扱う系が微小であり、従来法のような大きな細胞集団を扱う実験系では解析困難な事象であることが挙げられる。 このような点を克服するために、我々は分子生物学的な手法を用い、これらの機構の解明を試みている。 発生工学技術を応用すれば、胞胚の浸潤の中心となる栄養膜細胞のみを分離可能である。具体的には、次に、Primer Extension Preamplification,RT-PCR,PCRなどの手法を用い、極めて微量な細胞集団から、極端には細胞1個からでも、目的とする物質の発現を解析可能な系を考案した。 着床現象はがん転移に極めて類似する点が多いことから、まず、特に胞胚が子宮内膜間質に侵入する際に作用していることが推定される細胞外基質分解酵素ファミリー中の92kDaまたは72kDa Matrix Metalloproteinaseに関して現在解析を行っている。今後は、順次、がん遺伝子・がん抑制遺伝子産物や接着因子など対象とする分子種を拡大してゆく予定である。 また、可能であれば着床周辺期に転写を介した調節機序が推定された場合には、それらの機構まで解析することを予定している。
|