1)培養基質に各種の細胞外マトリックスを用いた実験系を用い、内膜上皮細胞や胎盤絨毛の形態形成を培養条件下で完全に再現した。その結果、両細胞の形態形成促進因子として肝細胞成長因子(HGF)が重要な役割を果していることが明らかとなった。 2)この内膜培養系に初期胚を作用させ初期着床現象を詳細に検討し、成長因子HGF(促進)、TGF-β(阻害)の役割や着床の浸潤過程に不可欠な細胞外マトリックス分解酵素と成長因子の相互作用を明らかにしつつある。 HGFは内膜上皮細胞の形態形成・機能分化の調節因子であり、遺伝子レベルの検討から月経期には子宮外組織(腎、肝など)から分泌され月経発来後の内膜修復に関与し、着床初期には初期胚侵入後の微小内膜再生に内膜間質細胞由来のHGFが効果的に作用していることが推測される。また、絨毛細胞の子宮内膜組織内での浸潤・増殖・妊娠成立にもこれらの成長因子が細胞外マトリックス分解酵素を介して関与していることが示唆された。 4)子宮内膜間質細胞に発現するHGFは肝より産生されるものとは異なるものであることが示唆され、現在詳細な検討を行っている。 5)in vivoにおいてもHGFは月経周期に応じ変動し、妊娠時にはこれと異なる挙動を示すことが明かとなった。 6)HGFと平行し、HGFの受容体であるc-met oncogene産物についても、その子宮内膜上皮細胞における役割を検討中である。
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