研究概要 |
これまで、我々は一貫して子宮内膜の機能・形態について検討してきた。その結果、子宮内膜細胞の培養系において、培養基質に細胞外マトリックスを導入することにより、内膜上皮細胞や絨毛組織の形態形成を、in vitroで再構築することに成功した。 さらにその形態形成には、Platelet-derived growth factor,PDGFをはじめ、種々の成長因子・サイトカインなどが関与することが推測された。 Hepatocyte growth factor,HGFは、当初、肝細胞再生に関わる因子として注目されてきたが、近年、その他の組織においても形態形成・機能分化に重要な役割を果たしている事が明かとなった。 HGFは月経周期に応じ、子宮内膜の再生に伴い、血中レベルも上昇し、また、内膜においてもHGFmRNAが検出された。しかし、HGFの由来が内膜間質細胞単独のものであるのか、時期によっては内膜内に散在するbone marrow derived cellの関与の有無については今後の検討課題として残された。何れにしても、着床期周辺の子宮内膜にとって、HGFは促進的に作用し、TGF-βは阻害的に作用することが推定された。 また、HGFは、内膜の状態を反映したmarkerであるとともに、HGFを誘導するヘパリンの使用により、臨床的に月経期の短縮や、体外受精・胚移植法において胞胚着床に向けての内膜環境の改善にも有効である可能性が示唆された。
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