研究概要 |
子宮内膜組織では腺上皮と間質細胞との間に、progesterone作用環境下におけるPRのdown‐regulationに差異があり、腺上皮と間質細胞では性ステロイド受容体発現の調節機構に異なった面があると考えられた。さらに細胞増殖の面(Ki‐67およびサイクリン・ファミリーcyclinA,cyclinB1,cyclinD1,cyclinE,cdc2,cdk2,cdk4)でも上皮では、estrogen作用下で増殖、progesterone作用下で増殖の停止をおこすのに対して、間質細胞では、progesterone作用下でもPRを発現した状態で増殖するという差異があることが判明した。また、基底層の内膜においては腺上皮も間質細胞ともにER,PRの発現においては機能層と同様であるが、細胞増殖の観点では、増殖が抑制されている傾向があった。この細胞増殖を抑制する因子としては、子宮内膜腺上皮においても間質細胞においてもHSP70が陽性である時期には細胞増殖が観察され難くHSP70が陰性となると細胞増殖がおこり、機能層上皮で卵胞期にHSP70(-)から黄体期のHSP70(+)に変化することにより細胞増殖の停止がおこることと、基底層では上皮,間質細胞ともにHSP70(+)で細胞増殖がおこらないことからHSP70が重要な因子となっていることが示唆された。また、卵管上皮と子宮頚部腺上皮では、月経周期における性ステロイド作用下で著明な性ステロイド受容体の変動あるいは細胞増殖の変動が少なく、細胞増殖は散在性であり、上皮の部分的再生の目的で細胞増殖がおこなわれているものと考えられた。したがって、これらの上皮は同じミュラー管に由来する組織であるが、性ステロイドの影響に対して子宮内膜機能層上皮とは異なった独自の反応形態をもっていると考えることができた。また子宮膣部扁平上皮や卵巣顆粒膜細胞でも子宮内膜機能層上皮とは異なった性ステロイド受容体発現調節機構が存在する可能性が示唆された。
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