研究概要 |
女性性器における性ステロイド受容体発現とその調節機構には、女性性器の組織ごとにさまざまな形式があることが判明した。estrogenの作用を受けてER,PRの増加による細胞増殖、progesteroneの作用によるER,PRのdown-regulationと細胞増殖の停止・細胞分化という古典的性ステロイド受容体発現の調節機構と細胞増殖・分化の概念は子宮内膜機能層の上皮細胞に適応することはできても、子宮内膜間質細胞、あるいは子宮内膜基底層の細胞群には適応できない概念である。また、卵管、子宮頚部線上皮、子宮膣部扁平上皮など同じミュラー管に由来し、性ステロイド受容体を発現している組織でも、月経周期による性ステロイド受容体発現の変動が乏しく、細胞増殖と性ステロイドの関連も乏しいことが判明した。また、卵巣顆粒膜細胞ではむしろPRの発現にgonadotropinのLHが深く関与していることも判明した。したがって、性ステロイド受容体の発現とその調節機構には、女性性器の組織ごとに異なった機序があり、血液中に同じレベルの性ステロイドが存在しても、女性性器の組織ごとにその組織本来の役割に相応した性ステロイドに対する反応をおこなうべく、さまざまな因子がその組織ごとに関与して反応の調節を行っている可能性が考えられた。子宮内膜ではその因子として、heat shock protein(HSP)70の関与、あるいはATL derived factor(ADF:human thioredoxin)やepidermal growth factor receper(EGFR)やc-erb-B2 proteinの関与も示唆された。今後、各種増殖因子、あるいはサイトカイン、gonad otropinなど、さらなる検討を女性性器の組織ごとに加える必要がある。そして、これらの女性性器の中の仕事分担において性ステロイド受容体が活性化されたり活性化されなかったりする機構を知ることは細胞生物学の今後の一つの重要な課題でもある。
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