HELLP症候群の原因は今まで全く不明であったが、最近我々は、血管造影、MRangiography等を用い、腹腔動脈及びその分枝に血管攣縮がおきている事を証明した。そこで平成7年度には、この腹腔動脈周囲におこる血管攣縮の成因に腹部交感神経の過剰刺激症状が関与していると考え、以下の研究を行った。 (1)HELLP症候群4例、妊娠中毒症16例を対象とし、血中エピネフリン、ノルエピネフリン値を測定した。血中エピネフリンは正常妊婦では100pg/ml以下を推移するが、HELLP症候群では全例100pg/ml以上の高値をとった。血中ノルエピネフリンも4例中3例は500pg/ml以上の高値を示した。 (2)妊娠ラット(15日)の腹部交感神経節に、エンドトキシン、Kceを滴下し腹部交感神経節の刺激状態を人為的に作成した。滴下6時間後再び開腹し、心臓採血後、肝臓、腎臓、脾臓、消化管を摘出した。肝酵素、血小板、カテコールアミン等血液検査と、摘出標本の組織学的検索を行った。エンドトキシン、Kce滴下によりHELLP症候群様の血液検査所見、組織学的所見が得られた。 以上の研究から、腹部交感神経節の過剰刺激反応がHELLP症候群の病因、病態と関連することが示唆された。
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