研究課題/領域番号 |
05454448
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
産婦人科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神崎 秀陽 京都大学, 医学部, 助教授 (80135566)
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研究分担者 |
刈谷 方俊 京都大学, 医学部, 助手 (90243013)
前田 道之 京都大学, 胸部研, 助教授 (20027329)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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キーワード | 子宮内膜 / 脱落膜 / 胎盤 / 性ステロイド / Aminopeptidase N / Neutral endopeptidase / Dipeptidyl peptidase IV / Bestatin |
研究概要 |
ヒト子宮内膜細胞はAminopeptidase N(APN)、Neutral endopeptidase(NEP) Dipeptidy peptidase(DPP)IV抗原をその細胞表面に発現しており、これら各ペプチダーゼ抗原の組織ならびに培養細胞における発現とその性ステロイドによる調節について検討した。これらのペプチダーゼの組織における発現は月経周期によりダイナミックに変動していた。すなわち、増殖期には間質細胞に限局してごく弱い発現しか見られないAPN,NEPはいずれも分泌期に増強する。妊娠に伴う脱落膜変化によりNEPの発現は徐々に減弱してゆくが、APNはさらにその発現が高まり、妊娠期間を通じて常に強い発現が見られた。また、腺細胞はDPP IVを特異的に発現しており、増殖期のごく弱い発現は排卵直後より急激に増強し、分泌期中期で最も強くなるという特徴的な変動が示された。培養経過に伴うペプチダーゼ抗原の変化がFSCScanでも解析可能であり、APNに対する特異的基質を用いた検討でも、培養細胞で抗原の発現強度にほぼ比例したAPN活性が証明された。ヒト子宮内膜間質細胞をプロゲステロン(P)とエストロジェン(E)を単独にあるいは同時に添加して培養すると、NEP、DPPIVについては明らかな影響は認められず、培養経過と共に低下していくが、APNはPとEの同時投与で明らかな表面抗原強度の上昇、活性の増加が認められた。このAPNの所見はin vivoの状態を反映しており、NEP、DPPIVについてはその調節因子が性ステロイド以外が主体であることが示唆される。そこで、APNの特異的活性阻害剤であるベスタチンをPにより分化誘導した子宮内膜間質細胞の培養系へ添加して検討すると、分化のマーカーであるプロラクチン(PRL)分泌が用量依存性に抑制され、同時に形態学的にも脱落膜化が阻害された。このような効果は対比して投与したベスタチンの光学異性体では見られなかったことより、間質細胞表面のAPNが自己の分化に関与している事が強く示唆される。すなわち、Pの作用を発現させる未知の分子の活性化にAPNが関わと考えられる。胎盤、卵膜でのAPN、NEP、DPPIVの発現についての検討を免疫組織染色で行った結果では、妊娠初期絨毛のサイトトロホブラストはNEPとDPPIVを発現しているが、シンシチオトロホブラストにはNEPのみが認められた。一方満期胎盤ではシンシチオトロホブラストのNEP発現は低下しており、絨毛間質細胞にAPNとDPPIVが強く発現していた。他方、羊膜上皮細胞はNEP、DPPIVを弱く発現しており、脱落細胞には強いAPNの発現が見られた。これらより、母児接点にある各種細胞がおける特異的なペプチダーゼ抗原の発現様式が明らかとなり、特に絨毛細胞の分化・増殖との関連でサイトトロホブラストにおけるDPPIVの発現は興味深い。現在妊娠維持機構との関わりで注目されている絨毛外絨毛細胞でのDPPIVの発現も確認されたが、これは今後の絨毛細胞機能解析に非常に有用であり絨毛細胞の増殖・分化とペプチダーゼ抗原の関連についての研究が今後の課題である。
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