研究概要 |
ブタ顆粒膜細胞での各種癌遺伝子と成長因子受容体の発現レベルは細胞の分化度によって大きく異り,erb-A mRNAは未熟な小卵胞由来の顆粒膜細胞においてその発現レベルが高く,myc mRNAは未熟な小卵胞由来の顆粒膜細胞でstage-specificな発現を示すことを認めた。逆に,EGF受容体は大卵胞由来の分化型顆粒膜細胞でその発現が高いことを認めた。しかもEGFは卵胞発育の程度により異る2つの作用(未分化細胞では増殖を分化細胞では分化機能を促進する)を有することを認めた。 今年度の研究成果から,顆粒膜細胞での各種癌遺伝子の発現が卵胞発育、成熟の度合いに応じて変化することが明らかにされた。未熟な未分化型顆粒膜細胞でのstage-specificなmyc mRNAの発現は未熟卵胞での顆粒膜細胞のautonomousな増殖を考える上で極めて興味深い。また,erb-A mRNAの発現レベルが未分化型顆粒膜細胞で高い事実は,甲状腺ホルモン受容体の発現が高いことと一致しており,顆粒膜細胞の増殖と分化の制御機構を考察する上で極めて意義深い知見を得た。他方,トロホブラストと癌遺伝子ならびに成長因子の関連では,トロホブラストがEGFを産生・分泌すること,しかもこのEGFの産生,分泌レベルは甲状腺ホルモン(T_3)添加で増加することを認め,各成長因子間のsynergistic actionが生殖機構の中で重要な役割をはたすことが明らかとなった。
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