卵巣内paracrine,autocrine機構における細胞機能調節因子の関与

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05454456
• 研究機関: 杏林大学
• 研究代表者: 吉村 泰典 杏林大学, 医学部, 助教授 (10129736)
• キーワード: 成長ホルモン / IGF-I / 卵胞発育 / 卵成熟

研究概要

成長ホルモン(GH)は卵胞発育促進効果を有しており、その作用機序は血中あるいは卵巣局所のIGF-Iを介する二次作用やGHの卵巣直接作用などが考えられている。bovine GHを用い、GHの卵巣に対する直接作用をin vitroでの家兎卵巣灌流を用いて検討した。GHは、in vitroでの卵胞発育および卵巣におけるE_2やinsulin-like growth factor(IGF-I)産生を用量反応性に増加した。GH投与後の卵巣内IGF-I濃度は1〜2hで有意な高値を示し、ゴナドトロピン(hCG)投与後の卵胞発育過程と同様の変化が認められたが、hCGと異なり排卵を惹起しなかった。またGH投与後の卵胞発育と卵巣内IGF-I濃度との間には有意な正の相関が認められたことより、GHは卵巣内局所で産生されたIGF-Iを介した作用機序により卵胞発育を促進すると考えられた。
家兎卵巣膜分画を用いたGH受容体は、ヒトGHに高親和性(Kd=6.1×10^<-9>M)を示したが、プロラクチンに対する親和性は低かった。またhCG投与によりGHの結合容量は減少し、排卵直前に回復する傾向を示したことから、卵巣GH受容体はゴナドトロピンにより制御されている可能性が示唆された。PRLは卵胞発育を促進せず、逆にhCGによって惹起される卵胞発育および排卵を抑制したとの報告や、今回使用したbovine GHはヒトGHと異なり、somatogenic受容体に特異的に作用すると考えられていることより、GHは卵巣内のsomatogenic受容体を介して卵胞発育を促進したと考えられた。またaffinity cross-linkingにより卵巣内IGF受容体はtype I受容体と推定された。

研究成果

• [文献書誌] Yoshimura Y,et al.: "Gonadotropin stimulates ovarian renin-angiotensin system in the rabbit." J Clin Invest. 93. 180-187 (1994)
• [文献書誌] Ando M,Yoshimura Y,et al.: "Direct ovarian effect of growth hormone in the rabbit." Am J Reprod Immunol. 31. 123-132 (1994)
• [文献書誌] Yoshimura Y.: "Local regulators in the ovary:an overview" Horm Res. 41. 3-6 (1994)
• [文献書誌] Yoshimura Y,et al.: "Inhibition of gonadotropin-induced ovulation in rabbits by perfusion with dibutryl cAMP via reduction of ovarian prostaglandin production." J Reprod Fert. 101. 207-212 (1994)
• [文献書誌] Yoshimura Y,et al.: "Prolactin inhibits ovulation by reducing ovarian plasmin generation." Biol Reprod. 50. 1223-1230 (1994)
• [文献書誌] Yoshimura Y,et al.: "Growth hormone stimulates follicular development by stimulating ovarian production of insulin-like growth factor-I" Endocrinology. 135. 887-894 (1994)
• [文献書誌] 吉村 泰典: "産婦人科学書I,生殖医学" 金原出版, 862 (1994)
• [文献書誌] 吉村 泰典: "生殖内分泌・不妊,内分泌検査法" Medical View, 191 (1994)