研究概要 |
Ishikawa株(ISIW)よりestrogen非依存性株(EIIL)を分離し、これをnude mouse皮下に接種した。接種部位に発生した腫瘍を切除後、局所再発と全身転移を来たしたmouseより腹水ならびに転移巣から転移性EIIL(mEIIL)を得た。(1)分離したmEIILはnude mouse腹腔内への投与で100%癌性腹膜炎と肝転移を起こしたが、親株であるISIWでは癌性腹膜炎と肝転移は見られなかった(n=10,p<0.001,χ^2分析)。(2)原発巣、転移巣のmEIILはErbB-2を免疫組織学的に発現しており、さらに肺においては腫瘍塞栓も認められ、血管内にある腫瘍塊にもErbB-2染色が陽性であった。(3)RT-PCRで検討したErbB-2の発現は原発巣、転移巣で有意に高く(p<0.05)またnidogenの発現は転移巣で最も高かった(p<0.05)。(4)aromataseの発現はin vivoにおいてのみ認められた。またEGF受容体(EGF-R)発現はin vitro,in vivoいずれにおいても同様で、原発巣と転移巣の間には差を認めなかった。(5)in vitroのestrogen(E)非存在下ではEIILは複数のE responsive binding domain結合蛋白を発現しているが、一旦in vivoに移植された後は単一のERのみを発現した。今回我々はEIILから転移形質を有する亜株mEIILを分離した。この転移能はnude mouseの継代移植で保たれており、形質として固定されたと考えられ転移の成立の研究に有用と考える。
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