研究概要 |
体癌の転移を検討するためには、まづ(1)estrogen依存型高分化型腺癌で転移を起こさないとされるIshiawa株からestrogen非依存性株を分離する(2)その分離株を用いてnude mouseへの継代接種を行なうことでclonal selectionを試み、高転移性株を分離樹立することを行なった。その結果EIIL株(Estrogen Independent Ishikawa Line)とmEIIL (metastatic EIIL)が分離された。これらの株について種々の転移関連因子の発現をreverse transcription-polymerase chain reactionで検討した。その結果転移能を獲得した株出はc-erbB-2,aromatase,nidogen,matrix typc metalloproteinaseの発現が高く、autocrine motility factor receptor,hepatocyte growth factorは変化なく、estrogen,progesterone受容体は有意に低下していることが明かとなった。またmonoclonal抗体を用いた検討では、このestrogen受容体はhormone binding domainに欠損がある可能性が示唆された。mEIILはnude mouseへの投与で高頻度に後腹膜リンパ節、肝への転移を引き起こす。したがって体癌に見られるsteroid hormone受容体陰性癌の高い悪性度を検討する優れたモデルとなるものと考える。現在はNIH3T3細胞に癌遺伝子erbB-2を挿入したものにさらに正常ヒトestrogen receptor cDNAを挿入したものを作製し、両者の悪性度、転移能の差異の検討をおこなっている。
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