自然流産組織の分裂間期細胞を用いたFISH 自然流産で得られた組織から細胞培養を行わずに染色体数の変異を知るために、まづ、FISHを行う方法を検討した。 材料と方法 (1)プロープ 染色体特異アルファサテライトDNAプロープで、ピオチン化されている市販プロープ(D1Z1、D17Z1、D18Z1、DXZ1、DYZ1、D3Z1)。21番染色体Down症候補遺伝子の周辺のコスミドプロープ。 (2)方法の検討-標本作製 1。組織をはさみで細切し、collagenase処理を2-6時間行う。 2。メッシュを通して消化されていない線維状の部分や組織塊を取り除き、single cellの浮遊液を得る。 3。通常の染色体標本作製と同様に標本作製を行う。 (3)方法の検討-FISH染色 通常報告されている方法との改変点は 1。FISHシグナル検出率をあげるためのdenature 2。シグナルの増幅。 結果と考察 1。プロープとして、トリソミーの報告のない17番染色体動原体部分のD17Z1を用いたところ、3個の蛍光スポットが数10%みられる例があり、3倍体細胞のモザイクが考えられた。 2。プロープとして、Y染色体長腕部分のDYZ1を用いたところ、1個の蛍光スポットを認める細胞が大多数をしめ、X染色体動原体部分のDXZ1を用いたところ、2個と1個の蛍光スポットが混在した例があった。G2‐M期の細胞はDNAが倍加しているため、2倍の数のスポットがみられるが、この場合は、DXZ1シ羊水浮遊細胞は扁平上皮細胞が主でしかも死細胞が多く、FITCが非特異的に染まり、FISHシグナルの検討の妨げとなる。グナルが2個で同時にDYZ1シグナルが2個であるはずである。DXZ1シグナルが2個である頻度とDYZ1シグナルが2個である頻度が異なるため、この症例では、XXYとXYのモザイクがあると考えられた。 3。Down症の診断に21番染色体動原体のアルファサテライトDNAを用いることができるが、このプロープは13番染色体動原体にもハイプリするとともに、動原体部分の多型により、蛍光スポットがほとんど認められないこともある。このため、トリソミー21を確実にどの症例でも検出することは困難である。そこで、Down症候補遺伝子の周辺のコスミドプロープを試験的に用いた。シグナルを増幅しても蛍光が微弱であるためすべての細胞で検出できるとは限らず、現在のところモザイクのない21トリソミーには適応できるが、低頻度のモザイクを検出には適していない。 4。分裂間期細胞を用いたFISHは、細胞を培養して分裂中期細胞を得る必要がないため、検体を得てから解析まで早ければ1日以内ですむ。細胞培養を必要とする羊水での染色体診断の時期を逸した症例で染色体の数の異常を検出できる可能性があるが、羊水浮遊細胞は扁平上皮細胞が主でしかも死細胞が多く、FITCが非特異的に染まり、FISHシグナルの検討の妨げとなる。現在羊水浮遊細胞を対象としたFISHを検討している。
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