研究概要 |
[1]癌性胸・腹水に対するプライミング理論を応用した免疫療法(動物モデル): 実験系はC3H/HeNmice-X5563腫瘍。 0.1KE皮下priming(day1)または無処置後、腹腔内にX5563腫瘍10^6個を移植(day10)し、腹水を形成した(day15)。day17にOK432を腹腔内に2KE投与した。Priming(+)の群は10匹中9匹で腹水が消失し、腫瘍が発生したのは2匹のみであった。一方、priming(-)の群は、10匹中1匹で腹水が消失し、残り9匹は腫瘍死した。primingは、腫瘍の移植後では無効。移植前であれば、10,20日前はともに有効で有意差無し。30日以上前では、効果が低下。この場合、re-sensitization(re-priming)する必要あり。この操作は移植前だけでなく、移植後腹腔内局注2日前でも有効であった。臨床応用する場合、ヒトは幼少期に溶連菌に感染(感作)しており、成人の癌性腹膜症にOK432を局注する場合、局注前に皮下に少量のOK432を接種(re-priming)することにより、局注の効果を増強すると考えられた。 [2]卵巣癌患者の癌性腹水に対する免疫療法(臨床):卵巣癌患者115例がrandomisedされた。OK432はday1,8に皮下に0.2KE投与、day10に腹腔内に10KE投与された。Priming群59例の腹水への効果はCR29例、PR18例で奏効率は79.7%。priming無しで腹腔内に10KE投与した群では、CP11,PR16で奏効率は48.2%であった。さらに、生存期間(中央値、5生率)は、priming(+)群:544日、29%,priming(-)群:327日、4%で、2群間には有意差(Log-rank:p=0.0039,Generalized Wilcoxon:p=0.0116)を認めた。 [3]卵巣癌初回手術後の再発予防のための免疫療法: III/IV期卵巣癌で初回治療(Neoadjuvant chemotherapyとoptimal debulking)によりpathologicalCRにし得た20症例をrandomisedした。A群は皮下にOK4320.5KE(2週毎)、腹腔内にSPG20mg(2週毎),B群は無処置で経過観察している。現在の時点で再発は、A群1例、B群4例である。現在追跡中。
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