研究概要 |
動物モデルによる癌性腹水に対する免疫療法の治療実験から、以下の事実が明らかにされた。抗原性の強いBRM(OK432,BCG-CWS等)による免疫療法では、少量を皮内に投与して全身を感作(priming)し、その後に大量を局所に投与することにより、強力な抗腫瘍特異的免疫を誘導することが可能であった。この際、primingにより、BRM-reactive Th活性が誘導され、大量投与の際、局所でBRM-reactive-Thと腫瘍特異的effector(CTL,抗体産生細胞)とが、細胞間相互作用が惹起され、結果的にin vivo抗腫瘍効果が誘導されることが明らかになった。従って、primingの意義は大きく、primingすることなく、局所投与しても、有効な免疫応答は得られなかった。 これに基づいて、「進行卵巣癌患者の癌性腹水に対する免疫療法」の臨床試験を施行した。 115例がrandomisedされた。OK432はday 1,8に皮下に0.2KE投与,day 10に腹腔内に10KE投与された。priming群59例の腹水への効果は,CR(完全消失)29,PR(50%以上の消失)18で奏効率は79.7%であった。一方priming無しで,腹腔内に10KE投与した群56例は,CR11,PR16で奏効率は48.2%であった。両者には奏効率に於いて、有意差を認めた(P<0.01)。免疫療法後は化学療法,手術を施行しており,現在follow upである。well-controlled radomised studyにより,primingの有用性が確認された。また,本法が奏効した症例では,患者の全身状態が改善し,その後のhigh dose intensive neoadjuvant化学療法を可能とした。無効例では,その後に十分な根治治療を受けることが出来なかった。本法の適用により、従来保存療法に終わっていた症例に対し,根治治療が高率に可能となった。
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