研究概要 |
正常人の上気道においてムチン遺伝子の発現がどの程度みられるかを検討する目的で、RT-PCR法により,MUC2とMUC5のmRNAの発現を検討した。対象は8名の鼻疾患のない健康成人と6名の通年性鼻アレルギーをもつ成人男子であり,下甲介粘膜を鋭匙で軽く擦過して組織を得た。この組織片よりRNAを抽出し,MUC2,MUC4,β Actinに特異的なプライマーペアを用いてRT-PCRを行なった。代表例を選び,5サイクル毎にPCR産物を取り出し,サイクル数とバンドの濃さとの関係を検討したところ,35サイクル付近ではPCR産物は指数関数的に増加していたので,35サイクルでPCR反応を行ない,βアクチンとの比をとって半定量化し,比較検討した。MUC2は正常人8名中2名に明らかなバンドがみられ,アレルギー患者では6名中3名にバンドがみられた。MUC5とβ Actinに関しては検討した14名全例で明らかなバンドがみられた。MUC2/β Actin比とMUC5/β Actin比は正常人とアレルギー性鼻炎患者で差がみられなかった。以上より正常人とアレルギー性鼻炎患者ではMUC2とMUC5の発現に明らかな差は見られなかったが,MUC5はMUC2に比べて発現量が多く,前年度の結果と一致し,鼻粘膜中に発現する重要なムチンと思われた。またこのRT-PCR法はムチンの発現を知るのに簡便な方法であり,今後他の病態間の比較や同一個体での時間の経過による変化をとらえるのに有用と考えられた。
|