研究概要 |
慢性副鼻腔炎患者から採取した鼻汁に5mMEDTA添加リン酸緩衝食塩水を加えて超音波処理後、遠心し、この上清を可溶性画分として集めた。この可溶性画分をゲル濾過し、最も分子量の大きい画分、すなわち可溶性ムチンの溶出している画分を再度ゲル濾過して精製した。これを糖組成の解析、アミノ酸分析、蛋白質量の測定を行い、精製可溶性ムチンを得た。この方法で慢性副鼻腔炎鼻汁15〓から総蛋白質量15.04mgの精製したヒト鼻汁ムチンを得た。 1.ムチンの細菌に対する付着性の検討 管壁にムチンを被覆した試験管の管壁ムチン層への各種細菌の菌付着を検討した。対照としては内腔をシリコン処理した試験管を使用した。S.aureus,E.coli,K.pneumoniaeではシリコン被覆群と比較してムチン被覆群の付着菌数が有意に多く、ムチンの細菌に対する付着性が認められた。 2.ムチンの細菌に対する障壁作用について ムチンを入れたソフト寒天とムチンを入れないソフト寒天を各々培地上に重層し、各種細菌がこれらのソフト寒天を通過する状態や、ソフト寒天上のコロニー形成状態を観察してムチンの障壁作用を検討した。コントロール群(培地のみの群)に比較して、S.aureus,E.coli,K.pneumoniae,P.aeruginosaの各菌液ともソフト寒天の厚い層のものでは培地の色の変化が乏しかった。また比較的高濃度のムチンが入ったものでは細菌が通過しにくく、また培地の栄養分も通過しにくいことが示唆され、細菌に対するムチン層の障壁作用が認められた。
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