全トランス型レチノールは、視覚過程において必要不可欠な成分であり、脊椎動物の眼では主に網膜と色素上皮細胞にみられる。全トランス型特異的レチノール脱水素酵素は、桿体外節膜に存在し、全トランス型レチノールと全トランス型レチナ-ルの間の相互転換を触媒している。我々は失明に至る遺伝性眼疾患である網膜色素変性症の病態を解明するために、このレチノール代謝の鍵酵素である桿体細胞に特異的なレチノール脱水素酵素のcDNAを単離し、その構造解析を行うことを最初の目標とした。 当初の計画どうり、精製したレチノール脱水素酵素のN末端から一部の一次構造を決定、ウシ網膜cDNAライブラリーからラット抗ウシレチノール脱水素酵素抗体を用いてレチノール脱水素酵素のcDNAを単離、単離したレチノール脱水素酵素cDNA塩基配列を決定し、1017個の塩基配列を持つことが判明した。光受容細胞特異的レチノール脱水素酵素は、346個のアミノ酸からなる、非常に疎水性の強い蛋白であると考えられた。蛋白の一次構造の解析からN末端は、メチオニンではなく、転写後にプロセッシングが起こることがわかった。COS7細胞にこのcDNAを導入した場合、抗体に反応する蛋白は発想するが、活性は測定が出来なかった。発現量が不足していることが考えられたので、安定な遺伝子導入細胞株をpcDNAIとCHO細胞を用いて作成した。しかしながら、光受容細胞特異的レチノール脱水素酵素活性は測定できなかった。従って、今後さらに感度の高い測定法を開発することと、相互作用を持つ分子を検索することを平行して行っていかなければならない。
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