我々は眼組織において発現している各種サイトカイン、増殖因子などを培養系で検討し、引き続いて動物の疾患モデルにおいてそれらの発現を検討した。角膜においてはまず、培養系でエンドセリンが発現していること、またエンドセリンが角膜に対し増殖促進能を持っていることを発見した。さらに涙液中に血清中より高濃度のエンドセリンが分泌されていること、実際の角膜創傷治癒にエンドセリンが促進的に働いている可能性を見出した。また、エンドトキシンぶどう膜炎や網膜虚血において、インターロイキンや腫瘍壊死因子などのサイトカインが発現してくることが分かった。特にぶどう膜炎においては炎症を惹起するLPSを投与後4-6時間という早期にこれらのサイトカインが浸潤細胞ではなく眼内の細胞に発現してくることがわかった。このことはこれらのサイトカインがぶどう膜炎の発症に関与している可能性を示唆していると思われる。また、対照的にTGF-bが発症後炎症の消退期に前房内に増加することもわかり、炎症の消退に何らかの形で関与している可能性が示唆された。また、炎症早期に一酸化窒素合成酵素の活性上昇が前眼部組織中にみられ、また酵素の阻害剤がLPSとの同時投与によって著明に炎症を抑制することから、炎症がおこる極早期の過程において、この酵素が関与している可能性も示唆された。今後、これらのサイトカインや炎症媒介物質と炎症の発症、消退の機序をさらに深く検討するつもりである。
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