研究概要 |
プロテインキナーゼC(PKC)は、イノシトール燐脂質の代謝回転に共役して活性化される蛋白質燐酸化酵素であり、多くの生理活性による生体膜受容体伝達系を介して細胞機能を調節する。しかし、網膜色素上皮細胞(RPE)におけるPKCの役割は解明されていない。そこで本研究においては、以下の項目について検討した。 (1)細胞培養は、特定の条件下での薬剤や酵素阻害剤あるいは促進剤の影響を評価するために有利である。そこで、ヒトRETの細胞培養創傷治療モデルを作成し、PKC阻害剤の創傷治療過程における影響を検討した。RPEをconfluenceになるまで培養し、直径2mmの細胞欠損領域を冷凍凝固法で作成した。欠損領域の細胞増殖過程を位相差顕微鏡および走査型電子顕微鏡にて観察した。コントロールでは役70%の欠損領域の細胞増殖が、約1週後に観察された。いっぽうstaurosporine(100nM)あるいはH-7(10μM)のPKC阻害剤が存在すると、明らかに欠損領域の治療は阻害された。さらに、新しい阻害剤であるmyristoylsted PKC pseudosubstrate peptideを使用して、この阻害作用を検討中である。C-AMPやC-GMP依存性プロテインキナーゼを阻害し、PKCにあまり影響しないHA-1004では。治療の阻害は認められなかった。これらから、PKCは細胞の移動。増殖の調節に重要な働きを担っているとかんがえられた。(2)RPEにはムスカリン受容体が存在することは知られているが、この受容体刺激につづくPKCに関わる細胞内情報伝達系については充分には解明されていない。本研究で、培養ヒトRPEにおいてムスカリン受容体がホスホリパーゼDにカップリングしていることが認められた。PLDは燐脂質の終末ジエステル結合に働きホスファチジル酸(PA)を産生する。PAは加水分解され1,2-ジ・アジルグリセロールになりPKCを刺激する。現在、PKC阻害剤によるPLDやホスホリパーゼCへの影響を検討している。
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