研究概要 |
本研究では、ヒトレニンに対する抗体、とくに活性型レニンあるいは非活性型レニンのどちらか片方を特異的に認識できる抗体を、モノクローナル抗体として作成し、それらの抗体を用いて、小児腎病変での活性型あるいは非活性型レニンの組織内局在を検討し、また血漿中のそれぞれのレニン値を測定できる系の確立を研究目標としていた。しかしながら、作成し得た4種類のモノクローナル抗体は、いずれも活性型、非活性型の両方に共通なエピトープを認識するものであった。そこで、これらを用い、総レニン(活性型+非活性型)の小児腎病変内の局在を組織化学染色の手法で検討すると同時に、血漿中の総レニン測定系を確立することを目指した。 その結果、4種類の抗ヒトレニンモノクローナル抗体中ただひとつの抗体(clone番号69-30)のみがホルマリン固定・パラフィン包埋標本をも認識できることがはんめいしたので、この抗体を用いた酵素組織化学染色法を行い、ウィルムス腫瘍、先天性間葉芽腎腫、異形成腎などの小児腎病変にprimary reninismとsecondary reninismの存在とその組織内局在が示された。 一方、総レニン値測定系に関しては、モノクローナル抗体(clone番号12-12)をビーズ固相化抗体として,前述抗体(clone番号69-30)をヨウ化レニン抗体として,bound/free分離にビーズ固相法を用い、immunoradiometric assay(IRMA)測定系を確立した。 正常児における血漿中総レニン濃度は乳児期に高値を示し,加齢とともに減少する傾向がみられた.ウィルムス腫瘍患児においては、術前に[平均+2SD]より高値を示したものが6割を占めた。このことより、腫瘍自体からのレニン産生が疑われる症例については,有用なマーカーになり得ると考えられた。
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