研究概要 |
donorとしてBrown‐Norwayラット,recipientとしてLewisラットを設定し,両者間の小腸移植モデルを作製,移植片は2週間空置した後,その20%を残してdonor全小腸と置換した。その後,粘膜増殖因子としてグルタミンを投与してcontrol群(20%短小腸Lewisラット)との比較を行なったが,明らかな有意差を得るには至らなかった。その原因の一つとして2週間という移植片の空置期間があげられる。食物の通過がまったくないため,この間に移植片の粘膜の萎縮が進行し,グルタミンの効果が不充分であったような結果がでたものと思われる。また,controlの設定にも問題があり,空置や免疫抑制剤の影響を考慮して,同系移植ないし異系移植のグルタミン非投与モデルを作成するべきであった。 グルタミンについてはepidermal growth factor(EGF)との関係が論じられており,すでに1988年にはJacobsがグルタミンとEGFの併用による効果の増強について報告している(Surgery vol.104,p.358)。しかし,両者の作用機序の比較はまだ不充分であった。そのため我々は、両者の作用機序が異なるとの仮説のもとにまずグルタミンによる実験を行なった。しかし,1993年にTienらがEGFの作用機序についてグルタミンを介するものと介さないものがあることを報告した(Surgery vol.114,p.147)。すなわち,グルタミンのみによる効果よりも,EGFのみによる効果やEGFとの併用効果の方が強いことが推測される。そこで,平成6年にはEGFによる研究を行ない,その結果いかんによってはグルタミンのみ,あるいはグルタミンとEGFの併用による研究を行なう方針である。
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